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武蔵野音楽学園

福井直昭学長メッセージ【新入生・在学生とその保護者の皆さまへ】

学長 福井直昭
学長 福井直昭

昨日の「緊急事態宣言」発令を受け、武蔵野音楽大学では本日よりキャンパスへの立ち入りを禁止させていただくこととなりました。このようなタイミングではありますが、それだからこそ、新入生だけでなく在学生の皆さんにも、新任の挨拶に代えてメッセージをお送りさせていただきます。 

新入生の皆さん、ご入学誠におめでとうございます。若さ溢れる皆さんをお迎えして、大学関係者一同大変嬉しく思っております。また、皆さんを今日に至るまで、ずっと支え励ましてくださったご両親、ご家族や、ご指導くださった先生等々、全ての方々に対しても、感謝申し上げたいと思います。そして、在学生の皆さんも、進級おめでとうございます。

ご承知の通り、新型コロナウイルスの感染拡大防止、そして新入生と保護者の皆様および地域社会の安全を守る観点から、誠に残念ではございますが、入学式の挙行を中止いたしました。また授業の開始時期も遅らせることになり、在学生のいくつかの演奏会も中止せざるを得ませんでした。皆様には状況をご賢察の上、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。 

今、大切なこと

私は、4月1日に学長に就任したばかりですが、この混沌とした時期に入学する皆さんに対して、特別な思いを抱かずにはいられません。皆さんの多くは、昨年度末に予定されていた卒業式を含む様々な行事の中止に直面し、複雑な思いのままで高校を巣立たざるを得なかったでしょう。そして現在、人生の新たな門出に立ち、不安と期待が交錯した複雑な思いで過ごしていると推察されます。特に、既に地方から上京した諸君、あるいは海外から入学した諸君は、生活の変化も重なって不安な日々を過ごしていることでしょう。また、学修に関しても、学事日程が後ろ倒しとなり、新入生・在学生の皆さん共に戸惑っていることと思いますが、本学では、皆さんの大学生活が一刻も早く軌道に乗り、円滑に進むよう、様々な対策を講じ、環境を整えております。しかし、皆さんにも、本学公式Webサイトに掲載される最新情報に十分注意するだけでなく、この授業開始までの約1ヶ月の空白期間において、自ら主体的に練習し、学修し、課題を追求していく積極的な姿勢が求められるのです。また、高学年の諸君には、今までの自らの学びを見つめ直し、将来自らがどのような方向に進んだらよいのかということを、改めてじっくり考える時間が与えられたとも言えます。 

しかしながら、その一方で、事態は刻々と変化しています。世界が新型コロナウイルスとの苦しい闘いを続ける中で、日本でも政府や自治体がさまざまな対策を打ち出していますが、有効な治療法が確立されていないこともあって、今後については予断を許しません。したがって、感染拡大を防止するためには、一人一人の自覚と責任感と良識ある行動が求められます。デマやフェイク・ニュースに惑わされることなく、交錯する様々な情報から、何が正しいものかを見極め、適切に行動する―このことは、高校生以前のように与えられた課題をこなし、試験に備えて暗記をする受動的な「学習」ではなく、課題の本質を見極め解決法を創造する大学生としての主体的な「学修」にも通じることです。 

2020年に伝えたい、建学の精神「<和>のこころ」

昨年創立90周年を迎えた本学は、昭和4年(1929)に武蔵野音楽学校として創立されました。創立者の福井直秋に学校を創ることを強く望んだ若い生徒たち、創立者、創立者の教育理念に強く共鳴した教職員、さらに私心のない善意によって強く支援をしてくれた多くの協力者の方々、これらの四者が、私心を捨て心をひとつに努力した結果、不可能と言われた学校創設が、はじめて現実のものとなったのです。

この時、生徒諸君は、率先して自分たちの手で校地の選択、校舎建設のための整地作業、校名・校章の決定までも行なったと記録されています。整地作業で言えば、当時、校庭にはまだ名も知らぬような雑草があちこちに生えていました。それを空き時間や休みの日に嬉々としてシャベルを握り、リヤカーを引きまわし、平坦な校庭に作り上げたのは、男子学生達でした。2週間もすると荒れた校庭は一躍して平坦な運動場になったといいます。また女学生も学校を思う気持ちは同じく、ある時は校庭の除草を、ある時は室内の清掃やガラス拭きを行いました。男子学生が樹木を植えれば、女学生が水を与えるといった具合です。音楽家にとって手は命といえます。しかし彼らの心には「我らの学校を皆で作り上げる」という学芸に対する弛みなき精進がありました。これらはあくまで学生本位で行われたということも、当時の彼らの団結力や比類なき愛校心、また創立者への信頼を伺い知ることができます。

 そして、このような不可能を可能とした「<和>のこころ」が、あらゆる困難を乗り越える原動力になるとの信念から、創立者はこれを建学の精神と定めました。以来、関係者が力を合わせ協力して物事にあたることに努めた結果、武蔵野音楽学園は、その後、戦時中の大困難も乗り越え、昭和24年にわが国初の音楽大学として認可を受けました。そして、これからみなさんが多くの思い出をつくるこの江古田新キャンパスの設立まで、創立者と当時の生徒諸君の学校設立への強い思いが、今でも形となって脈々と受け継がれていることになります。 

多様性や個性が尊重され重視される現代の社会では、自分の人生を貫く考え方、生き方、すなわち個性、アイデンティティーが何であるか、どうあるべきかを、今からしっかり考えて、自分の中に培い確立していくことが大切であり、同時に、他人の個性や価値観も尊重し、受け入れる努力や包容力、またそこから学ぶ謙虚な心も必要であります。そして、この協調性、協働性こそ、建学の精神「<和>のこころ」に通じるものであります。また、この「和」の精神は「個々人の自立」と表裏一体となって捉えられるべきであると、私は考えています。協調と同調は違う。是非、武蔵野の学生は、他者を尊重し、協調しながらも、自立して問題提起や解決ができる音楽人になってもらいたいのです。
 

皆さんが「音楽芸術」を研鑽する意味

皆さんもご存じのように、20世紀末から「グローバル化」が大いに進み、今後もその流れは一層加速されていくと言われてきました。もちろんグローバル化の推進は、多くのメリットがある。クラシック音楽の視点に立ってもそうです。しかし、世界で猛威を振るい、今まさに私たちの身近に及んでいる感染症拡大という事態は、人命はもちろん経済活動や社会生活の深刻な犠牲を地球規模でもたらしており、グローバル化の負の側面が実体化したものであると言えます。先ほど「表裏一体」という言葉を使ったばかりですが、まさにグローバル化とパンデミックが表裏一体であったわけです。我々は未来の正確な予測が困難なこの時代を、生き抜いていかねばなりません。もちろん新型コロナウイルスの特効薬やワクチンが開発され、その脅威を封じ込められる可能性も示唆されていますが、一般に、例えばワクチンが使用可能となるまではさまざまな工程があるため、時間を要するといわれています。長く厳しい闘いとなるでしょう。そして、人類がこの悲惨な状況から抜け出し、克服した時・・・世界は変化しているかもしれない。いや、変化しなくてはいけないでしょう。しかし、いかに人々の生活環境が変わろうとも、音楽芸術に心を癒され、これに明日を生きる活力を見いだすという、人間が生来持つ本性は普遍であると、私は信じています。 

今年、生誕250周年を迎えたベートーヴェンが生前語った言葉を紹介します。

「芸術は長く、生命は短いというが、長いのは生命だけで、芸術は短い。」

素晴らしい芸術は、永遠に語り継がれるものであるが、その奇跡の恩恵にあずかれる芸術は少ない、と解釈することもできます。それくらい、何百年も愛され続けた珠玉の音楽には価値がある一方、学ぶのは決して簡単なものではない―武蔵野の学生諸君には、偉大な作品の真理に少しでも近づき、そこに少しでも触れた時の幸福感・喜びを感じるために努力を重ねてほしいと思います。そして、このことこそが、本学が教育理念のひとつとして掲げている「音楽芸術の研鑽」です。 

武蔵野音楽大学の教職員一同は、新入生の皆さんが失われた日常を取り戻し、希望で胸をふくらませて入学されること、在学生の皆さんが元気にキャンパスに戻ってくることを心待ちにしております。また、こうした状況下において、大学の教育研究の成果を可能な限り通常通りに維持しようと努力いたしております。しかしなにより、このような活動を物心両面から支えて下さっている学生のご家族には、心から改めて感謝申し上げます。

いまこそ、その建学の精神「<和>のこころ」を体現する時です。武蔵野音楽大学は、皆さんが卒業の日を迎えるまで、みなさんの学びを応援し、必要な支援をしていくことを最後にお約束し、学長のメッセージといたします。 

令和2年4月8日
武蔵野音楽大学
学長 福井 直昭